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半田広宣特別コラム

新時代に必要とされる価値観とは



AIの進化とコミュニケーション

AIの進化によるメリット・デメリット

最近の関心事は、巷でも大きな話題となっているChatGPTの登場です。私自身も使ってみて感じたのですが、この技術の登場はこれまでの社会を激変させる歴史的な出来事のように思えます。

まだ完全とは言えないものの、ChatGPTは学問、ビジネス、ジャーナリズム等、分野を問わず、正しく質問をインプットしさえすれば、誰にでも理解できるように答えを教えてくれます。とても便利なツールですし、知識の獲得という点で言えば、この先「教師」が不要になるかもしれません。画期的な技術です。

しかし、一方で大きなデメリットも抱えています。例えば、これまで本屋に行って、偶然読みたい本に出会ったことはありませんか?背表紙のタイトルが気になって手に取って読んでみると、想像以上の内容でつい買ってしまった、そんな経験がある方も多いと思います。しかし、人工知能が今後一般化すると、自分の目的に沿った内容だけをAIに尋ねることに終始するようになり、その結果、こうした偶然の出会いが起こりにくくなります。

そうなると、全く違った角度からの新しい知識や情報に触れる機会が減少し、自分好みの情報だけを追求するようになって、知識の範囲が極端に偏ってしまうことになりかねません。また、偶然性が消えることにより、自分で枠取った限定的な世界でしか知識を得られなくなり、その結果、偶然の出会いからの発想力や想像力が日の目を見なくなる可能性もあるということです。

それだけにとどまりません。本屋に行く、学校に通うといった行為は、ただ学びを得るためだけのものではないですよね。目的の場所まで様々な想いを抱えながら歩いたり、乗り物に乗ったりといった経験や行動をします。知識というのは、単なる言葉だけで成り立つものではなく、自分が経験した様々な行為や記憶がそれらの情報と重なり合い、一つの「匂い」となって知識と一体化します。そのことが知識に自分の個性を与えるのです。

AIによる知識の獲得は、経験や行動の記憶が持つこうした「匂い」を失わせ、単なる言葉の情報だけの非常に平板的なものとなってしまう可能性があります。その結果、知識をいくら得ても、頭だけの薄っぺらで平板的な人間になりかねません。

知識との関わり方が変わることによって心の深度を失う可能性があるのは恐ろしいことです。つまり、AIの進化による変化は、人間の感性に訴える要素がなくなっていくデメリットもあるということです。このような時代の変化に、知識と心、双方のバランスを保ちながら前進すべきか、慎重に考える必要があると思います。

アフターコロナにおけるコミュニケーションの変化

コロナウイルス感染症の爆発的な発生に伴い、オンラインでのコミュニケーションが急速に進展しています。しかし一方で、アナログなコミュニケーション(人と直接会う、表情で気持ちを伝える等)が急激に減少しているように感じられるようになりました。

日本では、海外と比較してマスクを外すことに躊躇する人が多いと言われています。西洋では、自己を形成するために神が存在し、神に見られることで自己を確立します。そのため個人の意志やロジック(理屈)が重視されます。それに対して日本人は、世界と自分が内面で繋がっているという感覚を持っています。

和歌の世界観を例に取ればわかりやすいですが、和歌は目に見える風景や季節の移ろいといった感覚的なものに、自身の心情とのつながりを見出すものです。私たち日本人は目に見えるものを単なる対象とせず、自分自身の一部として捉え、自分自身と共に存在すると無意識的に感じています。

だからこそ、日本人は他人の顔色を伺うことや、自分の表情が他人に見られることに対して、西洋人以上にデリケートに反応するのかもしれません。西洋化が進む現代の日本社会で、これは非常に根深い問題と言えるでしょう。

また、今の子どもたちは、コロナ期、周囲の人全てがマスクで顔が隠れた状態で育ったため、コミュニケーション能力に影響を与えるのではないか?と不安視されています。幼児期は人の顔の表情から感情を理解し始めますから、コロナ期を過ごした子どもたちには影響があるかもしれません。
ただ、AI化と同様に、このような危機意識は、人間社会に変化をもたらすチャンスでもあるので、こうした時代だからこそ、感覚をより重視した教育が必要です。ITに触れること以上に五感を育てることの重要性がますます大事になってくることでしょう。

これは、子どもだけでなく私たち大人にも同じことが言えます。AI時代こそ人間が重視すべきは感覚や感性であり、共感力などの人間力が求められる時代になってきます。

自然と触れ合い、人との体験を通じて感性を磨くこと。AIの発展によって時間ができた分、地域コミュニティや家族、友人といった少数のグループで、感覚に即した経験を共有することに価値や喜びを感じるようになるはずです。

これからの時代はデジタルとアナログ、意識の二つの領域を理解し、使い分けることが重要です。私たちは、まだこのバランスを育む術を手に入れてはいません。今後の教育や社会、何より私たちの意識において、より人間性を大切にした取り組みが求められてくることになると思います。

2023年6月-ブロッサムNo.92

デジタル社会の弊害

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半田 広宣

半田 広宣Kohsen Handa

福岡県生まれ。1983年心身を健康にする未来型健康商品の開発・販売を始める。株式会社ヌースコーポレーション代表取締役。現在、武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー(SAF)。

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