半田広宣特別コラム
私たちは、本来、太陽の周期や月の満ち欠けなど、自然界が作り出すリズムに同調することで心身の健康を保っています。そのバロメーターとなるのが様々な生体リズムを調節している体内時計です。
最近の研究によると、うつ病など、心のコントロールができなくなる人は、ほぼ例外なく、この体内時計が乱れていると言われます。
この体内時計の乱れには様々な要因があります。例えば今の時代、明るい光というと日光ではなく、LEDライトの光をイメージする人の方がほとんどです。若い人は、就寝前にスマートフォンの画面を開くのが習慣になっています。本当はリラックスすべき就寝前に、デジタルの光で目を刺激してしまうことは睡眠の質にマイナスの影響を与えてしまいます。
また、今は紫外線が体に悪いということが常識になり、自然光を浴びる人が少なくなりました。しかし、実際は、紫外線は私たちの皮膚に働きかけ、免疫力の維持に欠かせないビタミンDの生成を促しています。その意味で、短い時間での日光浴は健康維持には必須なものです。
早く寝て、早く起き、日の光を浴びる―これは基本です。歳をとると誰でも早寝早起きになるとよくいいますが、これは体内環境を整えるために身体が無意識的に自然のサイクルを取り戻そうとしているからです。
月の満ち欠けも私たちの身体のリズムと密接な関係を持っています。月が新月から満ちていくとき、生命力が活発化します。四季のリズムも大切です。夏は汗をしっかりとかいて、冬は逆に暖を十分に取る。これら自然のサイクルになるべく同調するようなライフスタイルに変えることが深い眠りには必要です。
季節感を無視した生活や、昼間、日光を一切浴びないような生活が当たり前になると、体内時計のリズムは大幅に乱れ、眠りにも悪影響を与えるようになります。
例えば、最近季節の変わり目に起こる体調不良や天候不順による心身の変調を経験されている方も多いのではないでしょうか。季節を認識する感覚の中には本来、陰と陽の生命エネルギーを調整している根本的なリズムが息づいており、それを感じる感覚を失ってしまうと自然が当たり前のように与えてくれていた自然治癒力という恩恵を受けられなくなってしまうということです。
私たちの脳は昼の間、様々な意識活動を通して情報を収集し、睡眠中にその情報を整理して記憶の中に定着させます。イメージとしては昼に意識を外界に向かわせ様々な情報を収集し、その情報を夜間、眠りの中で吸収・消化する。昼に吐いて、夜に吸う。覚醒と睡眠とは、このように考えると「意識の呼吸」とも呼べるものなのです。
しかし、現代社会に生きる私たちは許容量以上の情報に飲み込まれ、経済活動や人間関係など昼間の生活に振り回されています。それだけ意識を外に吐き出したなら、今度はしっかりと睡眠で意識を吸い込む必要があるのです。
それを怠ってまた昼間の世界に戻ると、吐いてばかりだと息が苦しくなるのと同じで、意識の呼吸のバランスの崩れによって、心や身体が病んでいくことになります。
そのため、自然と同調したライフスタイルへと見直すことで睡眠のリズムを整え、意識の呼吸をより深く、より自然なものへと導き、自己治癒力を高めていくことが重要だと思います。
2022年9月-ブロッサムNo.89
デジタル社会の弊害
ポストコンピュータ時代の日本人
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福岡県生まれ。1983年心身を健康にする未来型健康商品の開発・販売を始める。株式会社ヌースコーポレーション代表取締役。現在、武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー(SAF)。