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半田広宣コラム 「ヌースの時間」

テロの撲滅ではなく、争いの撲滅へ



テロの撲滅ではなく、争いの撲滅へ

イスラム国(ISIL)による邦人人質事件が悲劇的な結末を迎えた。2月1日、安倍総理は「政府として全力で対応してきたが、誠に痛恨の極みだ」と語った。しかし、翌日2日に菅官房長官は「日本政府としては犯人側と最初から交渉する気は無かった」と言って、交渉を全面的に否定した。この発言の食い違いに政府は人質の命について真剣に考えてくれたのだろうか?という疑問を持った人も多かったのではないだろうか。

「テロリストとは一切交渉しない」と言えば確かに聞こえはいいし、またそれが国際的な常識となっているのも事実だと思う。しかしそれはあくまでも表面上のことであって、実際には国に拠って様々な対応がなされている。
米国と英国は人質救出のための特殊部隊を持ち、テロリスト側の捕虜も抱えているので人質交換にも時には応じている。デンマークやオランダなども仲介者などを挟んで身代金の支払いに柔軟に応じている場合もある。日本も独自の対策を立てていいのではないか。政府には国民を守る義務がある。でなければ一体何のための国家なのだろうか。

現在、中東地域には日系企業やNGO団体に所属する人たちなど在留邦人が約1万人ほどいる。彼らの活動が今まで中東の発展のためにどれだけ貢献してきたかは計り知れない。もしも海外で人質となった日本人の命を政府が保証しないということになれば、これから先おそらく現地へと赴く人たちは激減していくことだろう。
ましてや、現政権が推進する積極的平和外交で、自衛隊が中東に赴くことにでもなれば、今までの中立的な人道主義に基づいた日本の信頼や評判は大きく失われてしまう。それこそテロリストの格好のターゲットとされるのではないか。気がかりなのは、今回のこの邦人人質事件に対する政府の対応を国民の約6割が支持しているという世論調査の結果が出ているということ。このままでは「国民を守る」という大義名分の下、憲法の改正にまで安易に議論が進みかねない。

世界は刻一刻と変化している。もはや国家の集まりとして、世界情勢を見る時代は終わりつつあるように思えてならない。今回の中東問題もイスラムと自由主義国家の対立という表の側面よりも、争いによって巨額の利益を上げようとする「軍産複合体」の存在が鍵となっている気がする。アメリカを筆頭とした資本主義国家がテロの撲滅を執拗にリフレインするときは、そんな裏の部分を見ることも時には必要だと思う。
その一方で、日本にも政治家だけでなくマスコミや一般の人の中でも「テロの撲滅」が絶対正義だと信じて疑わない人が多く存在している。「民主主義を守り抜く」という国家のあるべき姿と、テロ問題の背景となる裏事情との認識のギャップを、私達はまずはしっかりと意識に上げなくてはいけない。

どちらが本当か嘘かといった問題は二の次で構わない。こうした真反対の見方があるということもまずは頭に入れ、二重三重のレンズを通して、世界中の紛争を見ることが重要なのではないだろうか。

2015年3月-ブロッサムNo.59

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半田 広宣

半田 広宣Kohsen Handa

福岡県生まれ。1983年心身を健康にする未来型健康商品の開発・販売を始める。株式会社ヌースコーポレーション代表取締役。現在、武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー(SAF)。

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