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半田広宣コラム 「ヌースの時間」

トランプ旋風が灯す不穏な種火



トランプ旋風が灯す不穏な種火

アメリカが本当に大変なことになっている。大統領選でトランプ氏が勝利して、就任早々から次々と今までの政策路線とは真反対の大統領令を打ち出しているからだ。TPP離脱宣言に始まり、メキシコからの不法移民を防ぐための壁の建設、イスラム7か国への突然の入国禁止令、難民の受け入れの凍結など、次々に選挙時の公約を履行していっている。

これを「トランプ旋風」と呼ぶべきなのか、それとも「トランプ暴風」と言うべきかは人によって意見が分かれるところだろうが、確実なのは、彼は言ったことはすべて実行していくに違いないだろうということ。そうなれば、米露の関係は今までになく親密になり、逆に日本は穏やかではなくなるだろう。

なぜなら、この新大統領は良くも悪くも生粋のビジネスマンだからだ。駆け引きには長けている。在日米軍の撤退をちらつかせながら防衛費を増額させ、米国産の武器を買わせて日中の緊張を高めることで、自国経済を活性化するような手段を平気で講じてくるのではないか。それも悪いことだとは一概には言えないが、彼の一挙一動がこの先、日本の政治家たちを右往左往させていくことに間違いはないだろう。

しかし、なぜこんな強権の大統領が登場してきたのか。言うまでもなく、これはアメリカの高所得者層や彼らを票田に持つ職業政治家やワシントンで権力を握っている既存の体制へのアメリカの労働者たちの反感がもたらしたものだ。上位10%の高所得層が国の半分の富を握っていると言われるアメリカ。国がいくら儲かっても、その富が国民全体に公平に分配されることはない。経済成長と言えば聞こえはいいが、グローバリズムが叫ばれるようになってからは、デキる人間だけが富み、そして富める者だけが増々リッチになるいう資本主義本来の性格が以前にも増して浮き彫りになっている。

それがグローバル化というものの本性なのだから致し方ないかもしれない。そうした今までの趨勢からすれば、トランプ大統領の政策はとんでもない暴挙に映っているのだろうが、米国内で低賃金であえぐ、特に白人の労働者たちにとっては皮肉なことだが「待ち望んでいたヒーロー」の登場となっているのだ。

これから先、この騒ぎは対岸の火事では済まされなくなってくる。昨年のイギリスのユーロ脱退の騒ぎもそうだが、行き過ぎたグローバリズムへの反動が世界各国の民衆の間で起こり始めているのだ。20世紀後半は1億総中流社会とまで言われた日本でさえ、現在では上位10%の高所得層が国の4割の富を握り、確実に貧富の差が拡大していっている。

日本でも、相も変わらずの大企業優先の政策で突っ走っていくなら、ある日突然、トランプのような強権型の政治家が国民の過半数の信を得るということだっておきかねない。こういう状況がいかに危険であるかはこれまでの歴史が証明していると言える。これは第二次世界大戦前夜の状況と似ている。ファシズムの種火がチラチラと揺らめき出しているのだ。

なぜファシズムなどといったものが生まれてくるのか。この理由をアメリカの経営学者ドラッガーは的確に語っている。すなわち、ファシズムとは「民主主義への絶望」と「自由主義経済に対する絶望」から生まれる――ファシズムの契機は、単に一人の独裁者の出現のよっておこるものではない。無数の名もなき人たちの絶望がヒトラーのような怪物を生み出してしまうのだ。それを今一度肝に銘じておきたい。

2017年3月-ブロッサムNo.67

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