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半田広宣旧コラム 「ヌース的人生のススメ」

ポスト・ヒューマンボディーズ



NHK衛星放送で立花隆最前線報告「サイボーグ技術が人類を変える」という番組をやっていた。去年放映された番組の再放映である。カフェ・ネプの方でも話題になっていたやつだ。第一話は「人体と機械の融合」、第二話は「脳をどこまで変えるのか」というタイトル。昨日と今日の二日にわたって興味津々でTVを見た。

第一話では、落雷事故で両腕を失った男性に装着された人工の腕や、病気で完全に視力を失ってしまった女性が人工の眼で光を取り戻す様子が紹介されていた。身体の一部を機械で代替するいわゆるサイボーグ技術は、一昔前ならSFの世界の話だったのだろうが、近年のITとロボット技術の驚異的な進歩もあって、ここ4~5年で突然変異的な発展を遂げてきているらしい。こうした技術が今、現実にあるということに想像していた以上の驚愕が走った。

第二話はある意味もっとすごかった。こちらは身体改造ではなく、意識改造である。脳への電気刺激によるメンタルマニュピレーション、感情操作技術の紹介だっだ。番組ではうつ病患者の脳に電極を埋め込み、そこに微弱な電流を流すことによって悲しみの感情を抑制する現場が紹介された。研究者の話では、近い将来は、神経強迫症、統合失調症といった精神病の治療のみならず、食欲中枢やその他の感情中枢への適用も可能になるだろうということだった。cg25―それが悲しみの中枢の登録名である。

コンピューターが登場してきた時点で、身体と機械の境界が曖昧になっていくことは予想していたが、ブレイン・マシン・インターフェイスのテクノロジーがこれほど早く実現しようとは。。しかも、この分野にはおそらく軍事技術への応用を先頭に豊富な研究資金が流入してきているはずだ。今後の進歩は分刻みと言っても大げさではない。立花隆はこういった一連の技術を目の当たりにして、それを「人間の進化」と言っていたが、確かにそれは今までの人間のイメージを劇的に変化させる事件には違いない。

人間主体はいままで宗教、哲学、思想など、いうなれば人間の中に組み込まれたソフトウェアが人間を変えるものだと信じてきた。しかし、この番組を見る限り、ソフトウェアの進化に見切りをつけ、ハードウェア自体を別のものに入れ替えようとしているように思える。この先にあるのはやはり身体、総入れ替えの技術なのだろうか。身体と機械の境界をまずは曖昧にし、それから一気に機械的身体への変身を図る――ポストヒューマンボディーズ。未来社会はクローン人間とサイボーグが二大種族としてこの地球上を闊歩する。そんな破局的イメージが脳裏をかすめる。

番組の中でも多少触れられていたが、こうなるとますますわたしたちの心の在処が問題となってくるのは必至だ。身体の脳と心の脳とは言うものの、心は本当に脳の中にあるのか?いや、もっと別の表現で言い換えよう。未来は本当に脳の中にあるのか?いや、そもそも、こんな世界の実現が本当に未来と呼べるものなのか?人類まるごと、揃って存在の外部へ出ようとしてなはる。。こんな恐ろしい世界、うち、はっきり言って、ようつき合わんて。

2006年1月-半田広宣ブログ

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