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半田広宣旧コラム 「ヌース的人生のススメ」

メディアに棲む悪霊



去る4月25日に起こったJR福知山線の列車脱線事故は、死傷者106名、負傷者500名というJR発足史上最悪の事故となった。
お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方の一日も早い回復を願って止まない。

こうした大事件が起こるたびに考えさせられることだが、最近のマスメディアの報道姿勢は常軌を逸しているとしかいいようがない。

事件直後の現場を救助の邪魔になると知りながら轟音を鳴り響かせて低空飛行するヘリコプター。相当のショックを受けているであろうと思われる被害者の方々、さらには心を痛めているであろう被害者の家族の方々に、無遠慮な質問を矢継ぎ早に浴びせる記者やレポーターたち。負傷者たちが病院に搬送される様子を、その搬送すら邪魔するような勢いで群がるカメラマン。そしてそれらをあたかもドラマのように組み立て、弁士のように感情移入たっぷりにナレーションを入れるニュースキャスターたち。
報道番組のこうしたエンターテインメント化は、あさま山荘事件あたりから始まり、阪神大震災やオウム事件あたりでおおよそのテンプレートが出来上がった。

しかし、最近ではさらに拍車がかかり、本来ならば中立公正でなければならないマスメディア自体が、あたかも当事者のようにして、加害者への制裁に加担する。イラクの人質事件の時もそうだったし、つい この間のフジVSホリエモン事件のときもそうだった。記者会見は糾弾会へと化し、当事者たちはよってたかって誘導尋問で吊し上げられる。
こうなってくると、一部の政治家が「今やマスコミこそが巨大な権力だ」と言うのも、うなづけないこともない。マスメディアもまたビジネスである。視聴率稼ぎのため大衆の下世話な興味を満足させなければならないのも 理解できないわけではない。しかし、それを社会正義だと勘違いしている輩もいるのだから事態はかなり深刻である。

悪貨は良貨を駆逐する、というが、同じく悪意は善意を駆逐する。メデイアを覆ったこの無意識の悪意は、いとも簡単に社会へと伝播する。そのことをマスメディアは肝に命じるべきだ。今回の事件の場合、あまりにエスカレートしたJR批判は、結果的に一部の心ない者たちを煽動する形になり、線路への置き石や、駅の爆破予告、乗務員、駅員への暴行など、全国各地でJRに対する嫌がらせを勃発させた。こうした嫌がらせがまた大きな事故につながることがあれば、その責任の一旦は間違いなくマスメディアにあるだろう。

メディアの語源とは本来「霊媒」である。とすれば、現在のマスメディアは間違いなく社会に悪霊を引き入れ続けている元凶だろう。聖霊を降臨させるメディアの登場を願うばかりである。

2005年6月

イシュタルの夢

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