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半田広宣旧コラム 「ヌース的人生のススメ」

ウイルス化する社会



新型肺炎(SARS)騒ぎがひと段落したと思ったら、今度は鳥インフルエンザウイルスが世間を騒がせている。
エイズを始めボルナ・ウイルス、肝炎ウイルス、さらにはO-157も、直接の犯人は「大腸菌」というバクテリアだが、その裏にはバクテリオ・ファージというウイルスが関わっている。

なぜこんなにウイルスが暴れだしたのか?調べてみると、1980年以降、新種のウイルスの発見が激増しており、その数はゆうに80種類を超えるという。
この発見の背景には、走査技術発達がある。それから、エイズやエボラ熱など、元々各地の風土病として限定されていたウイルスが、自然破壊に伴って文明圏へ流れ込んできたという見方もある。しかし、これは本当だろうか。本質はもっと別なところにあるのではないか。

ウイルスには「DNAウイルス」と「RNAウイルス」という2種類がある。新しく発見されるウイルスのほとんどはRNAウイルスである。
深刻な感染症をもたらすのは、RNAウイルスの中の「レトロ・ウイルス」と呼ばれる連中で、レトロ・ウイルスは逆転写酵素によってRNAを宿主のDNAに書き込んで同化し、繁殖する。この手のウイルスたちは自律機能を持っていない。自律した別の生体の中に素知らぬ顔で入り込み、やがてはその宿主を殲滅させてしまう寄生虫的代物である。
これって何かに似てはいないか。そう、コンピュータである。

コンピュータは自分で思考することはない。思考を行うのは人間だ。人間は思考の結実をプログラムとしてコンピュータに移植する。一度プログラムしてしまえば、人間はその思考作業をコンピュータに任せっ放しとなり、今度はコンピュータにそれを教わるようになる。
情けない話であるが、私はワープロやパソコンを使うようになって漢字をかなり忘れてしまった。知り合いには定規で線を引けなくなった設計士やデザイナーもいる。オフィスや職場のデジタル化が進むほど、こうした能力や技術の喪失があちこちで起こっていることがわかる。

これは考えてみればかなり空恐ろしい状況だ。コンピュータが逆転写酵素を使って人間をコピーしているとは言えないだろうか?コピーされた人間は自らの自律性を放棄し、コンピュータに依存するといったシステムがいつの間にか世界規模で出来上がってきているのだ。今や社会事態が完全にウイルス化しているのである。

自分たちで物を考えるという習慣を奪回しなければ、やがてコンピュータが世界を乗っ取ってしまうに違いない。その時、人間社会はウイルスに侵されて死に至る。宿主細胞のように、その生命力を喪失してしまうだろう。そういった私たちの意識の鏡写しのように見えて仕方ない。

2004年4月-ヌース通信No.15

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