ヌースコーポレーション|NOOS CORPORATION

メニューを開く
資料請求

半田広宣旧コラム 「ヌース的人生のススメ」

精神のエコロジー



最近は、相次ぐ薬害問題や食品汚染などで、人々のエコロジーに対する関心がかなり高まってきている。
エコグッズ、エコファッション、エコカー、エコショップなど、エコマーケットは日増しに大きくなっているが、どうも手放しで喜べない状況がそこにはある。

以前、こんなことがあった。自然食を推進するある団体が主催したイベントに講演で招かれた時のことだ。
もちろん、そこでは食事も全て無農薬野菜と玄米食のメニュー。徹底して無添加の食品を厳選していた。夜、コーヒーが飲みたくなったので、近くの喫茶店に出かけようとすると、主催者側の人がイベント会期中の外食は禁止しているという。コーヒーならばうちで用意したタンポポコーヒーがある、と言われ、まぁ、郷に入っては郷に従え、ということで、その夜のコーヒーは断念したが、この禁止令にはびっくりした。
ほんの僅かでも添加物が入っていれば、それは食べ物と見なさない。そして、他者にもそれを食べさせない。これは言わばエコ権力だ。

こういう考え方はエコロジーの意味を履き違えている。エコロジーの「エコ」とは、ギリシャ語の「オイコス(住まう)」に由来する言葉で、元来「住まうことについての学問」を意味する。つまり、人間の生活全般について考える学問のことをエコロジーと呼ぶのだ。
確かに食の問題は重要な要素には違いないが、そこに家族関係や人間関係といった精神のエコロジーが含まれていなければ何の意味もない。食のみに偏りすぎたエコロジーは、エコロジーの本質を台無しにしていると言っても過言ではないだろう。

TVで面白い実験をやっていたことがある。
二つの水槽があって、一方には汚染された都市の海水が入っており、その中でタコが元気一杯踊るように動き回っている。もう一方には汚染されていない海水が満たされている。タコを後者の水槽に移してやると、とたんに元気がなくなって縮こまり、やがて衰弱して死んでしまった。

生命と言うのは実に不思議なものだ。ここには悪を全く撲滅してしまうことが最悪の状況を招くという重要な示唆がある。
われわれの健康というものは単に物質的な側面で成り立っているのではない。衣食住の生活環境は元より、精神環境、社会環境、その他様々な環境からなる実にデリケートなバランスで成り立っている。

強い精神力を養うためにも多少の悪や汚れは必要だ。
そして、それらを排除することではなく、それらと上手く折り合いをつけながら共生していくことに、精神のエコロジーの本質がある。
モノだけではなく、もっと心に気を配ろう。

2003年7月-ヌース通信No.12

赤信号、皆で渡れば怖くない

老人と道

半田広宣コラム一覧へ戻る