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半田広宣旧コラム 「ヌース的人生のススメ」

最大快楽の追求から最小苦痛の追求へ



今年の夏はやけに暑い。暑さ寒さも彼岸までと言うが、今年は立秋を過ぎても暑さが収まるどころか。天気予報でこの先一週間の予想最高気温を見ると、今日(8月19日現在)から、35度、36度、36度、35度、34度、34度、34度、と毎日のようにほぼ酷暑日の連続である。

何を隠そう我が家はこの盆休みの間、居間のクーラーが壊れてしまい、まるでドバイのような暑さが続いている。これじゃ熱中症で倒れてしまうということで、緊急にとった策が、他の三つの部屋のクーラーをすべて全開にして居間に冷気を流し込むという荒技。おかげで何とか無事に過ごせてはいるものの我が家の今月の電気代は確実にギネスを更新してしまうだろう。

ネットのニュースなどを見ると、この酷暑は全世界規模で起こっているようで、ロシアでは例年の夏より何と10度も気温が上がっているという。それに伴い熱中症による死者、干ばつや森林火災、スモッグなど様々な被害が続出しており、中央政府は非常事態宣言を発している。
一方、南半球側の南米では打って変わって寒波が猛威を振るい、数百人の死者が出て、こちらも各国政府が緊急事態宣言を出している。どちらも、原因は偏西風の異変にあるという。近年の異常気象にはすでに慣れっこになってはいるものの、今年は例年に増していい知れぬ不気味さを感じてしまう。

暑い、寒いといった身体の不快さだけならまだいいが、後々ボディーブローのように利いてくるのが、この世界的な気象変動によってもたらされる農作物や海産物に対する深刻な影響だ。すでにロシアでは小麦やジャガイモの収穫量が大幅に減っており、小麦の国際価格は20%ほど上昇している。日本でも異常気象の影響でサンマの収穫高は昨年の3分の2に落ちていると言うし、こんな状態がもし仮にこれから毎年のように繰り返されれば、食物自給率約40%の日本はひとたまりもない。

以前もこのコラムに書いたが、カエルをいきなり沸騰したお湯の中に入れると、びっくりしてすぐに飛び出してくる。しかし、最初水の中に入れておき、下から徐々に熱した場合、鈍感にもカエルは水温の上昇に気づかず、最後はかわいそうにゆでガエルになってしまう。
今の日本人のほとんどはどう考えてもこの哀れなカエルにイメージが重なってしまう。異常気象にも慣れっこ、未曾有の天災にも慣れっこ、政治の腐敗にも慣れっこ、役人の天下りにも慣れっこ。TVでは相も変わらずレポーターたちが、高級リゾートやグルメの紹介に奔走している。自然は必ずプラスマイナスゼロで収支バランスを合わせている。とすれば、人間が文明の利器を通して味わっている膨大な快楽の裏には、必ずやそれ相当の苦痛が担保されているに違いない。

どこかの国の首相のスローガンの二番煎じにはなるが、僕らはそろそろ幸福観の矛先を最大快楽の追求から最小苦痛の追求へと改めるべきではないのか。何とも淋しい目標ではあるが、それが今の日本という国の偽らぬ現状ではないだろうか。

2010年9月-ヌース通信No.41

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