こころの相談室 酒井先生からのアドバイス
現在、男性の更年期障害が急増していると言われています。今回はこのような症状をどのように予防したらいいのかお聞きしたいのですが。
女性の更年期障害の場合はホルモンの関係で起こりますが、今、巷で言われている男性の更年期障害というのは、ホルモンというよりもストレスによる自律神経のバランスの崩れからくるものが多いんですよ。
自律神経には活動的なときに働く交感神経と、リラックス時に働く副交感神経の二つの種類がありますが、ストレスが重なってくると交感神経が働きっぱなしになってしまうんですね。そうすると、この両者のバランスが崩れて、気力の落ち込みや、体のいろいろな不具合として出てくるんです。特にひどくなると、家でふさぎ込んだままになるというケースも珍しくありません。
普通は、誰もストレスがそんな深刻な症状を引き起こすとは思っていませんよね。それで、気づかないうちについつい無理してしまうと思うのですが、男性の更年期障害の兆しというのは自覚症状として現れるものなのでしょうか。
初期症状としては、慢性の疲労感と不安障害ですね。ただ、この初期症状が分かりにくい。最近は疲労感と無気力感が区別がつかなくなってきてるんです。だから、単なる疲労と思って放っておいたら、いつの間にかうつ病になっていたというケースも多いんです。ですから身体と同じように、普段から自分の心の状態に対しても極力注意を払っておくことが必要ですね。
たとえば、体は疲れているんだけど、休日に何かしないと損だと不安になり、気ばかり焦ってしまうとか、今までは平気だったのに人混みの中に出るのが何となく億劫になるとか、テレビのチャンネルを理由もなくよく変えたりだとか、こうした状態が目立ってきたら、ちょっと黄色信号です。
改善策や予防策として何かアドバイスはありますか。
そうですね。薬は使わないにこしたことはないので、自然食品やサプリメントを摂ることをおすすめします。
漢方では補中益気湯(ホチュウエッキトウ)や八味地黄丸(ハチミジオウガン)といったものがありますし、あとサプリメントとしては、最近、ラフマ葉のエキスを主成分としたとてもいいものが出ています。ラフマは中国では古くから心身の疲労を癒すお茶として親しまれている植物ですが、意欲を高めたり、疲労回復に役立つので、わたしのクリニックでも使っています。あと感覚を鋭敏にすることも意欲の増進に役立つので、そのためにDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサぺンタエン酸)が含まれているものを補給するのもいいでしょう。
精神面ではどうですか。日頃心掛けた方がよいことなどありますか。
あまり生真面目にならないことですね。無理に頑張ろうとしないこと。リラックスしてアバウトに考えることが必要です。
そして、女性のようにしゃべったり、笑ったりすること。家族の間でも、仕事の同僚との間でも、ちょっと寄ったコンビニの店員さんとの間でも。ちょっとした世間話でいいんですよ。とにかく言葉のやりとりをするといいでしょう。他人との会話によって予期しないところから癒されたり、やる気が出てきたりするものです。
災害時における心の在り方
不登校の問題点
連載・特集コンテンツTOPへ戻る
1951年東京都生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学 医学研究科博士過程修了。現在「ストレスケア日比谷クリニック」院長。オリコン・エンタテイメントより発売の書籍「患者が決めた!いい病院 2007年度版」内にてストレスケア日比谷クリニックが第3位に選出。