こころの相談室 酒井先生からのアドバイス
ABCDの中から一つだけ答えを選ぶ選択式のテストの際、最後の二つまでは答えを絞れてもそのどちらが正しいのかを迷ってしまう、皆さんはこのような経験はありませんか?
このような場合、多くの人は最終的な答えを「知識・記憶」ではなく「勘」で決めるようです。実はこの「勘」というものは心の健康にも深く繋がっているのです。
たとえば「勘」が悪いと、自分が良かれと思って行動したのに予期せぬ批判を受けるなど、物事全てが円滑に動かなくなってしまいます。私のクリニックでもうつ病を患っている方は間違いなくこの「勘」が悪くなっていると感じるようです。
逆に「勘」が良いと、すべての選択が的を射ていて、周囲からの評価も上がり毎日を楽しく過ごすことができます。成功している人はよく「運が良かった」と言いますが、それは「勘が良かった」と言い換えることができるかもしれません。「運がいい」と「勘がいい」はとても近いことなのです。
そして、この勘(=運)を良くすることは学習することができ、感覚を変えることで高めることができるのです。
勘を磨く方法 ~学習編~
毎日、その日一日の出来事の中で、どんな些細なことでも「良かった」と思えたことをノートに書き出す。
「良かった」と思える行動を意識し、たくさん経験することで、私たちには自然と未来を感じ取る能力というものが身についてきます。
「勘」を良くするには未来を感じ取り、予測し、それによって行動した時に、果たしてそれが正しかったかどうかということを学習する必要があります。
勘を磨く方法 ~感覚編~
何かに没頭する自分を知覚する別の自分を作る。
これは現在というものに焦点を当てたやり方です。
私たち現代人は何かをする際、別のことを考えながらしてしまうことが多いです。目的に向かいながらも「うまくいかなかったらどうしよう」などと雑念に支配されてしまう。そのような中で「勘」を良くするには、まず、「現在自分が取り組んでいることに没入している自分」を作り出し、その自分を知覚する。つまりもう一人の自分を心の中に作り出す感じです。
私たちの行動は、常に現在に閉じ込められています。それは未来に対する感覚=勘がダメになってしまうということなのです。その「支配されている姿」を見る存在を作ることで、現在に閉じ込められている自分を解放することができます。
現在という時間から自由になることで未来への予測を可能にし、勘(=運)を良くすることに繋がっていくのです。ちょっと難しいかもしれませんがぜひ試してみてください。
掲載内容を寄稿していただいた酒井先生が、精神科医として長年の臨床経験から"心がより元気になる"アドバイス「Dr.酒井の冗談じゃない!」をYouTubeで配信中です。
心の中に溜まった怒りの解消法
どうしても自信を持てない人の解決法
連載・特集コンテンツTOPへ戻る
1951年東京都生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学 医学研究科博士過程修了。現在「ストレスケア日比谷クリニック」院長。オリコン・エンタテイメントより発売の書籍「患者が決めた!いい病院 2007年度版」内にてストレスケア日比谷クリニックが第3位に選出。