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ほしのかたちみ~イデアサイコロジーの世界~

発達障がいのグレーゾーンについて



グレーゾーン

前回は発達障がいについてお話ししましたが、その中で「発達障がいは個人によってその症状に濃淡がある」というお話もしました。その「淡」の方向の延長線上に、診断はつかないけれども発達障がいの特性がある「グレーゾーン」といわれる状態の方がいらっしゃいます。

つまり、発達障がいの特性をいくつか持ってはいますが、診断基準をすべて満たすわけではないため発達障がいとの確定診断をつけることができない状態のことを「グレーゾーン」と呼んでいるんですね。注意欠陥・多動性障害(ADSD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)の特性の一部が見られる状態ということです。

「グレーゾーン」というのは正式な精神医学の診断名ではありませんので医師が診断時に使用することはありませんが、近年発達障がいの方が増えていると同時にこのような境界線上にある方々も増えてきており、「グレーゾーン」という言葉が使用されるようになってきています。そして、このようなグレーゾーンの子供をどのようにサポートしたらいいのか頭を悩ませている方も増えてきていると思います。

グレーゾーンの子供のサポートには、まず公的な支援が必要なのかそうでないのかを判断することが必要です。「グレーゾーンだと支援って受けられないのでは?」と思う方もいらっしゃると思いますが、グレーゾーンの場合でも疑いがあれば支援を受けることができます。
また、グレーゾーンの中でも症状が軽く、公的な支援を受けなくても日常生活には問題ないというケースでは、親と本人が「発達障がいの傾向がある」ということを意識し、その特性を理解することが重要になってきます。

発達障がいグレーゾーンの子どもの意識発達を考えた場合、最も大事なのは二次障害を生じさせないことになります。二次障害というのは、発達障がいの特性をうまくコントロールできないことから日常生活や人間関係、学業などに問題が起こり、その結果別の症状(頭痛、腹痛、食欲不振、チック、うつ、強迫性障害、不安障害、対人恐怖、引きこもり、暴力、自傷行為など)が生じてしまうことです。

このような症状は、本人が発達障がいの特性を知らず、また親や周囲の人も理解していないために、本人の生きにくさを単なる努力不足、弱さ、わがまま、甘えと取ってしまい、その結果、自己肯定感の著しい低下と自己嫌悪が生まれ、社会への恐怖感、不安感、不信感などを増大させていくということから生じてきます。 ですから、逆にこの発達障がいの特性を本人と親が理解し、適切な対策と訓練をしていくことで社会に適応できるケースも多いです。

親が見て見ぬふりをしないことも大切

ただ、ここで一番難しいのは、本人と親が発達障がいの傾向があると受け入れることなんですね。今でこそ、発達障がいはよくあることという認識も広がってきてはいますが、やはり「発達障がい=普通ではない、能力が低い」というイメージは強く、自分や子どもがそうだということを受け入れるのは相当な覚悟と勇気が必要です。日常生活がままならない重度の障がいの場合は受け入れざるを得ない状態になりますが、日常生活は普通にできるし見た目も普通となると、逆に本人も親もなかなか受け入れ難いというのが現実です。

でも、なんとなくあやしいと思いつつ、「グレーゾーン」の状態を見て見ぬふりをして子供が思春期を迎えてしまうと、周囲の友達との差がだんだんと明らかになってきて、先ほどお話しした二次障害が表れてしまうということもあります。
これは子ども本人にとっても、それを見ているご両親にとっても大変つらいことですよね。ですから、特に「グレーゾーン」の子供の場合には、乳幼児期から子供の特性をしっかり正しく見極め、発達障がいの知識を深めて適切な対応を取ることが最重要課題となります。

また、子供に発達障がいの傾向がある場合、どちらかの親にもその傾向がある場合があります。自分にも発達障がいの傾向があるために子供には苦労させないように最初から特性にあった対応をしようとする親御さんもいらっしゃいますが、自分にその傾向があることに気づかず、子供にも適切な対応ができない場合もあります。また、配偶者に発達障がいの傾向がある上にその自覚がない場合は、子育てに対する考え方が合わず協力することができないために、子供にも悪影響を及ぼしてしまうというケースも多いです。

このように「グレーゾーン」へのサポートにおいては、子供本人の意識発達という面でも、親の立場からの子育てという面でも、発達障がいの特性の正しい認識というのがもっとも重要になってくるのです。

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春井星乃

春井星乃Harui Hoshino

お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。臨床心理士として精神科クリニックに勤務し、東京都スクールカウンセラーも経験。心理学・精神分析・エニアグラム(9つのタイプによる性格分析法)を通して、人間の性格構造を明らかにする「イデアサイコロジー」を提唱。著書に『「目覚め」への道の歩き方』。

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