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こころの問題特集

老人性のうつについて



老人性のうつ

日本人の平均寿命は男性79歳、女性85歳(2007年度)。医療の発達により多くの方が豊かな暮らしを維持しています。
しかし、高齢者の15%もの人がうつの症状に苦しんでいる現実があります。
このページでは最近問題になっている高齢者のうつについて考えてみます。

老年期特有のストレスがうつの引き金に

老年期はこの時期にしか味わえない人生の達成感を受けることが出来る期間です。様々な問題に直面しストレスを抱えることもありますが、年配の方々はそれまでの経験で、そのストレスに対処する方法を学んで自ら解消できるようになっているのがこれまでは一般的でした。
しかしここ近年、老年期のストレスが大きくなり、気力や体力の回復の遅れに伴い、老人性のうつを発症する傾向にあることがわかってきました。核家族化がすすみ、高齢者人口が増大する中で、情報不足になりやすいお年寄りのうつに関して、しっかりとした予備知識を持っておくことが大切でしょう。

うつになりやすい高齢者には大きく分けて、二つのタイプがあるようです。
それは「依存性格」と「強迫性格」というものです。

まず「依存性格」とは、日常生活で処理しなければならないことがあると、他人の助けを簡単に求めてしまう傾向の人のこと。通常は子供や兄弟に依存しますが、依存する相手が病気になったり、いなくなったりすると、依存の対象を失ったことのショックが引き金になります。「私はどうやったらこの先やっていけるの」と不安に襲われ、パニック、うつ状態となっていくようです。
また身内がいる間でも「だれが助けてくれるの?」と自分の助けになる存在を確認することで安心を見出すため、コミュニケーションがうまくいかないと心のバランスが崩れてしまいます。
老人性うつと診断された方に対して性格テストを行ったところ、依存性格は全体の32%で最も多く、また男女比では、男性19%、女性が40%を占めていました。
依存タイプの人は自立を促す方向に進めていったほうが良いのですが、介護などの問題も含んでおり、家族だけで解決するのは困難とされています。地域ボランティアや自治体によるサポートを活用したり、深刻さが増すようであれば、病院の協力を得ることも大切です。

老人性うつが起こりやすいもう一つの性格的特徴は、「強迫性格」タイプです。
これはよく言われる強迫性障害とは異なり、強情さ、物事に対しての断定的傾向、データや時間に強く注意を払うなどの症状がみられます。このようなこだわりは、エンジニア、会社役員、医師に多いのですが、その性格から社会的に成功した人も多いようです。

強迫性格の人は、基本的には社会的役割や規範に愛着を持ち、秩序を愛していて、問題に直面すると解決にエネルギーを注ぐ、いわば「頼りになる人」が多いです。
しかし老年期になると、社会的立場や発言力の低下など環境の変化が始まり、問題が起こってもそれを具体的に解決することが難しく、混乱してしまうようです。特に配偶者と死別するような事態になると、どうしてよいかわからなくなり、解決する力を無くしてしまうのです。依存性格より表に現れにくく、孤独死や痴呆に向かうケースが多く見受けられます。

家族と介護される方へのアドバイスとして

家族や介護する人は、うつの症状をどのように捉え、接すれば良いのでしょうか。
ここでポイントをまとめておきます。

  • 規則的に医学的チェックを受け、バランスのよい栄養、適度な運動、よい睡眠習慣を保つよう促す。
  • 過度のアルコールや処方されていない睡眠薬は控えさせる。
  • 家族や友人、同僚と共に社会へ出ることを勧める。高齢者のグループ活動(バス旅行など)に参加するのも良いことです。ただ、うつ的な症状になっている時は無理に気晴らしを勧めないように注意が必要です。
  • 老人施設へ移る必要があれば、言い出し難いことですが、早くから十分にそのことも話しておく。「どこへ行きたいか」「どんな施設が最も良いか」も話しておくとよいです。
  • 気楽に接する。うまくいくように頑張っても、その努力は徒労に終わったりすることもあります。自分はできる限りの努力をしたことを認識して、気楽に対応することが大事です。
  • 辛抱強さを持つ。お年寄りは家族が望むような生活を望んでいないことが多いです。お年寄りは目新しい物事(転居、介護など)には抵抗があります。穏やかな言動で辛抱強く解決していくことが最善と言えます。

老人性うつにならないためには

老年期のメンタルヘルスはその年代になって突然準備できるものではありません。若い頃から生活習慣や思考法に工夫をこらしておく必要があるでしょう。
また、老年期に「うつ」にならないための留意点として、次のことを意識しておくといいでしょう。

  • 若いときから老後に備えておく。老後に備えるための貯えをするという意味ではなく、老後に何をするか、退職後には何をしてみたいかを考えておく。
  • 孤立しない人間関係をつくるとともに、自分だけの時間をとれるようにしておく。
  • あいまいさに耐える力を身に着ける。自分だけで事態が進展しないときには、しばらく見守るような余裕のある態度がとれるようになっておく。
  • 必要な援助を他人に求める態度を持つ。どのあたりまで自分で問題解決に努力すべきか、あるいは他人に援助を求める必要があるかを見極める能力を若いときから養っておく。
  • 過去にこだわる態度から「今ここから」と未来を発想する意識を持つ。
  • 主導権を徐々に若い人に渡すことを心がけておく。

このように自分の状態やストレスについて学習することは、老年期に問題が起こったときに落ち込んだりうつ状態にならないための「最善の予防法」だと言えるでしょう。

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