麻衣子先生のカウンセリングルーム
18歳の受験生です。このところいざという時になるとお腹に激痛が走り、トイレから出られなくなり冷や汗も出て試験が受けられません。
このままでは1月のセンター試験も受けられなくなり、その前にある大事な大学推薦の試験も受けられなくなりそうで怖いです。どうしたらいいでしょうか?(18歳・女性)
ご相談内容拝見しましたがその後調子はいかがでしょうか。18歳の受験生であるとのことで、体調が悪くなくてもストレスの多い時期ですし、体調が悪ければなおさら不安が大きくなってしまいますよね。試験も迫っているのでできるだけ早く適切な対応を取りたいところです。
ご相談内容から真っ先に疑われるのは、過敏性腸症候群(IBS)と言われる病気です。炎症などの器質的疾患はないのに、下痢や便秘などの症状を伴う腹痛や不快感が慢性的に続きます。
ストレスを感じると症状が出るのが特徴的で、具体的には試験や発表の前、通勤通学途中、授業中などが多いと言われています。現代のストレス社会で急増している病気で、特に10代から30代に多く見られます。
今回の場合はこの過敏性腸症候群である可能性が高いとは思いますが、念のため病院に行って血液や便の検査、内視鏡検査等をし、炎症などの器質的問題がないかどうか見極めることが必要です。かかりつけのお医者さんがいる場合はまずそこで相談してみましょう。いない場合は内科か消化器科、胃腸科などの病院に行ってみてください。
様々な検査ができる環境が整っているならば、心療内科もお勧めです。
検査の結果、過敏性腸症候群であると診断された場合、まずは食事療法、運動療法でライフスタイルの改善を図ります。3度の食事を決まった時間に取り、下痢を繰り返している場合には、香辛料や冷たいもの、脂っこいもの、乳製品、カフェイン等を控えます。また散歩などの適度な運動も効果的と言われています。
睡眠や休息を十分に取り、決まった時間に就寝、起床することも大切です。ストレス解消になる趣味などを楽しむこともいいでしょう。
ただ、受験生ということもあり、なかなか睡眠や休息を十分に取ること、運動や趣味の時間を取ることは難しいかもしれませんね。
そもそも過敏性腸症候群という病気は、脳がストレスや不安を感じるとそれが腸に伝わって腸の運動に影響を与えるという仕組みで症状が発症すると言われています。従って、以上のようなライフスタイルの改善で症状が治まらない場合、根本的治療を目指すには認知の仕方を変えていく心理療法的アプローチが必要になってきます。
しかし受験を数ヵ月後に控えた受験生には、かかる時間と労力が大きいことは確かです(比較的短期間で効果が望めるのは、自律訓練法、ブリーフセラピー、認知行動療法などがあります)。そこで対症療法ではありますが、補助的に薬物療法を選択することもできます。
整腸剤や下痢止め、抗うつ薬や抗不安薬などを使用する場合、脳が腸に影響する時に働くセロトニンという神経伝達物質をコントロールする薬を使用する場合、漢方薬を使用する場合などがあります。
また、補助的に使う腸内の環境を整えるサプリなどもあります。このような可能性と選択肢があることを頭に入れて、できるだけ早くお医者さんに行ってみてくださいね。そこで、一番合った方法をお医者さんと相談してみてください。
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お茶の水女子大学大学院博士前期過程を修了後、臨床心理士資格を取得。東京都心の心療内科クリニックに勤務、東京都スクールカウンセラーにも携わる。